平成29年5月27日神戸新聞

川西高2自殺 学校、いじめとの関連認定

川西いじめ

2012年9月、兵庫県川西市の県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が自殺した問題で、同校は、自殺といじめの関連を認める内容の追加報告書を県教育委員会に提出したことが、26日までに分かった。
当初の報告書はいじめとの関連を認めなかった。いじめと自殺の関連を認定した昨年3月の神戸地裁判決を受け、両親が報告書の訂正を求めていた。県教委によると、追加報告書の提出は異例。
生徒は12年9月2日、自宅内で自死。同月20日に同校が県教委に出した報告書は「いじめがあったことは確認された」とする一方、自殺との関連は「現時点ではあるともないとも判断できない」としていた。同校が設置した第三者委員会も13年5月に公表した調査結果で、いじめは認定したものの「自殺と関連づけることは困難」
と結論づけた。
両親は同年12月、県や元同級生3人らに損害賠償を求めて同地裁に提訴。判決は自殺といじめの関連に「合理的な疑いを挟む余地はない」とし、同級生3人と県に計210万円の支払いを命じた。
判決を受け、両親は今年4月、同校に対し「いじめがなければ、息子は生きていたということを明記してほしい」と、報告書の訂正を求めていた。
追加の報告書は25日付でA4判3枚。地裁の判決文などを引用し、いじめと認定された行為を明記し、自殺といじめとの関連を認める記述を盛り込んでいる。同校の校長は、神戸新聞社の取材に「生徒の死を重く受け止め、いじめの防止に取り組んでいく」とした。(井上 駿)

【川西市の高2男子いじめ自殺】 2012年9月、兵庫県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が川西市内の自宅で自殺し、その後、同級生の手紙でいじめが発覚した。学校の調査などで、同級生3人から「ムシ」「汚い」と呼ばれたり、教室のいすの上にガの死骸を置いたりするいじめを受けていたことが分かった。県警は13年5月、同級生3人を侮辱容疑で書類送検し、神戸家裁は3人を保護観察処分とした。

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平成29年5月27日河北新報
<仙台中学生自殺>市長 問われる覚悟
◎終わらぬ連鎖(下)岐路
<国は見切り>
不手際が続く仙台市教委に、国は見切りを付けた。
「教育委員会主体では、透明性や信頼性の観点から困難だ」
22日夕、文部科学省。4月26日に起きた青葉区折立中2年の男子生徒(13)の自殺を巡り、義家弘介文部科学副大臣は奥山恵美子市長に市長主導での調査を強く求めた。隣には大越裕光教育長が同席していた。
義家氏が大越氏を呼び出したのは、泉区館中の男子生徒=当時(12)=の自殺(2014年9月)への市教委の対応に苦言を呈した15年11月に続き2回目。大越氏は終始、沈痛な表情でうつむいたままだった。
泉区南中山中の男子生徒=同(14)=の自殺(16年2月)も含め、2年7カ月の間にいじめ絡みの自殺が3件続いた仙台市。義家氏は「重大性の認識の欠如」を特に問題視した。
「いじめ重大事態の疑いもないのか」。折立中生徒の自殺を発表した4月29日の記者会見で、こう問われた大越氏は「先入観を持たないようにしている」と否定。だが、3日後には文科省の指導で、重大事態として調査を進める方針に一転させた。
教諭2人による男子生徒への体罰も、保護者の通報があるまで市教委は把握できなかった。義家氏は「市長のリーダーシップで、なれ合いを排して外の目を入れるべきだ」と、市教委の調査能力を断罪した。
<独立性尊重>
義家氏から直々に指導力発揮を期待された奥山氏も当初、反応は曖昧だった。面談後、「副大臣も全面的にギアを入れ替えることが有効だとは思っていない」との見方を示した。
15年4月の地方教育行政法改正で、首長による教育大綱の策定や総合教育会議の開催、教育長の直接的な任命・罷免が可能になり、教育行政への首長の権限が強まった。ただ、市長就任前は市教育長だった奥山氏は、教委の独立性や中立性を尊重する姿勢が目立つ。
市教委が男子生徒への体罰を確認した今月19日。「体罰を見抜けず、力不足と批判を受けても仕方ない」と謝罪した大越氏を、奥山氏は「現行の教育長(大越氏)の下で調査を進めるべきだ」と罷免を否定した。
<8月で引退>
義家氏との面談から2日後の24日、奥山氏は記者会見で、いじめが絡む3件の自殺への対応や、全市立学校での体罰の実態調査のため、市長部局に第三者機関を新設する方針を表明。ようやく市長主導にかじを切った。
「教委のみで物事を進めることに疑義があり、身内に甘くなるという懸念もある。しっかりと私が関与していく」。
奥山氏は調査結果次第で市教委を組織改編する可能性にまで言及したが、「教委抜きで完全に進むわけではない」「学校現場を預かり、良くしていくのは教委の一人一人の力だ」と付け加えるのも忘れなかった。
悲劇の連鎖を今度こそ断ち切れるのか。奥山氏は8月で市長を引退する。岐路に立つ仙台の教育行政を、残された時間で新たな道へと導く奥山氏の覚悟が問われている。

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平成29年5月27日河北新報

<仙台中学生自殺>市長 問われる覚悟
◎終わらぬ連鎖(下)岐路
<国は見切り>
不手際が続く仙台市教委に、国は見切りを付けた。
「教育委員会主体では、透明性や信頼性の観点から困難だ」
22日夕、文部科学省。4月26日に起きた青葉区折立中2年の男子生徒(13)の自殺を巡り、義家弘介文部科学副大臣は奥山恵美子市長に市長主導での調査を強く求めた。隣には大越裕光教育長が同席していた。
義家氏が大越氏を呼び出したのは、泉区館中の男子生徒=当時(12)=の自殺(2014年9月)への市教委の対応に苦言を呈した15年11月に続き2回目。大越氏は終始、沈痛な表情でうつむいたままだった。
泉区南中山中の男子生徒=同(14)=の自殺(16年2月)も含め、2年7カ月の間にいじめ絡みの自殺が3件続いた仙台市。義家氏は「重大性の認識の欠如」を特に問題視した。
「いじめ重大事態の疑いもないのか」。折立中生徒の自殺を発表した4月29日の記者会見で、こう問われた大越氏は「先入観を持たないようにしている」と否定。だが、3日後には文科省の指導で、重大事態として調査を進める方針に一転させた。
教諭2人による男子生徒への体罰も、保護者の通報があるまで市教委は把握できなかった。義家氏は「市長のリーダーシップで、なれ合いを排して外の目を入れるべきだ」と、市教委の調査能力を断罪した。

<独立性尊重>
義家氏から直々に指導力発揮を期待された奥山氏も当初、反応は曖昧だった。面談後、「副大臣も全面的にギアを入れ替えることが有効だとは思っていない」との見方を示した。
15年4月の地方教育行政法改正で、首長による教育大綱の策定や総合教育会議の開催、教育長の直接的な任命・罷免が可能になり、教育行政への首長の権限が強まった。ただ、市長就任前は市教育長だった奥山氏は、教委の独立性や中立性を尊重する姿勢が目立つ。
市教委が男子生徒への体罰を確認した今月19日。「体罰を見抜けず、力不足と批判を受けても仕方ない」と謝罪した大越氏を、奥山氏は「現行の教育長(大越氏)の下で調査を進めるべきだ」と罷免を否定した。

<8月で引退>
義家氏との面談から2日後の24日、奥山氏は記者会見で、いじめが絡む3件の自殺への対応や、全市立学校での体罰の実態調査のため、市長部局に第三者機関を新設する方針を表明。ようやく市長主導にかじを切った。
「教委のみで物事を進めることに疑義があり、身内に甘くなるという懸念もある。しっかりと私が関与していく」。
奥山氏は調査結果次第で市教委を組織改編する可能性にまで言及したが、「教委抜きで完全に進むわけではない」「学校現場を預かり、良くしていくのは教委の一人一人の力だ」と付け加えるのも忘れなかった。
悲劇の連鎖を今度こそ断ち切れるのか。奥山氏は8月で市長を引退する。岐路に立つ仙台の教育行政を、残された時間で新たな道へと導く奥山氏の覚悟が問われている。

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平成29年5月25日朝日新聞

仙台いじめ、鈍い対応 中学生自殺、3年で3人

仙台いじめ市長
第三者委員会の設置を表明した奥山恵美子・仙台市長=24日、仙台市役所

2014年以降、市立中学校の男子生徒3人がいじめを受けた後に自殺した仙台市。悲劇が繰り返される背景に浮かぶのは、市教育委員会の対応の鈍さだ。24日、これまで3件での市教委の対応を検証する第三者委員会の設置が決まった。
仙台市では14年に泉区の中学1年、16年には同区内の中学2年、そして今年4月にも中学2年の男子生徒が相次いで命を絶った。
「様々な意味から(市教委に)疑問を持たれている。できる限りの調査をしていく」
仙台市の奥山恵美子市長は24日の定例会見でこう述べ、3件での市教委の対応を検証する第三者委を設置することを明らかにした。合わせて、2件目の自殺については遺族の要請もあり、いじめ防止対策推進法に
基づく再調査に踏み切る考えを示した。
3件目の自殺を発表した4月29日、大越裕光教育長は「いじめというよりからかい」と表現。クラスの男子の半数から「臭い」などと言われ、物を投げられるなど、「集団でのいじめ」の疑いが記者とのやりとりで判明しても、いじめとは認めなかった。
しかし2日後、大越教育長は「過去にいじめがあった」と認め、校長は「詳細を把握していない部分もあり、いじめと認定するか迷ったまま会見に臨んだ。反省している」と釈明。中学1年時のいじめを「解消された」とみなし、この校長に引き継がれていなかったことも分かった。
いじめ防止法で定める「重大事態」にあたると認識を改めたのは、さらにその翌日の今月2日。文部科学省の指摘を受けてからだった。
生徒が教諭から粘着テープを口に貼られ、自殺前日にも拳で頭をたたかれるなど、体罰を受けていたことも
19日になって明らかに。市教委による聞き取りでは把握できず、保護者からの情報提供で分かった。
大越教育長は「いじめの調査に傾注していて体罰を視野に入れることを想定できなかった」と語った。

■教訓生かされず
1件目の自殺を受け、市教委は16年度から、24時間対応のいじめ相談専用電話を設置。全ての市立中学校にいじめ対策専任教諭を置いたうえ、市教委にいじめ不登校対策班をつくった。
だが3件目では、生徒が2度のアンケートでいじめを訴えていたにもかかわらず、自殺を防げなかった。生徒が通っていた中学校のいじめ対策専任教諭も市教委の対策班に相談しておらず、市教委は問題を把握できていなかった。
1件目の自殺では、いじめた側から生徒に謝らせる場をつくったことで、教諭はいじめが終わったと判断。しかし、実際にはその後も続いたことが分かっている。いじめは、簡単にはなくならないという教訓を得たはずだった。
過去2件の遺族は「市教委は何をしていたのか。3人目は助けられた」と憤る。
いじめが分かった場合に、家庭での教育にも期待して加害生徒側の保護者に連絡するルールもできていたが、3件目のケースでは徹底されていなかった。
なぜ教訓は生かされなかったのか。市教委の加藤邦治副教育長は「意識を変えるのが一番難しい」と話す。
義家弘介・文科副大臣からは22日、市教委が機能不全に陥っていると指摘されたが、教育長の経験もある
奥山市長は24日の会見で、「完全な機能不全とは思っていない」と答えた。
(中林加南子、藤崎麻里、石川雅彦)

■国は直接介入を 教育評論家・尾木直樹さんの話
中学生ごろの反抗期になると、親に怒られても、勉強ができなくても、そうそう死を選ぶことはないでしょう。
中学生の自殺はまず「いじめありき」で対応しなければならない。
仙台市教委は最初の会見でいじめを認めないだけでなく、約3週間後に教諭の体罰が判明する。それすらも、保護者からの連絡がきっかけ。一般社会では隠蔽です。仙台市内部に自浄能力はなく、市長のリーダーシップにも期待できない。もはや文部科学省が直接乗り込んで行くべき状態になっていると思います。

■仙台市の中学生自殺をめぐる経緯
<第1の自殺>
2014年9月 自殺を図った仙台市泉区の中学1年の男子生徒が死亡
2015年8月 市教育委員会がいじめが関連した自殺と公表。その後、学校が同級生らに「転校した」と説明していたことが判明。市教委は「遺族から公表しないように強く要請された」
<第2の自殺>
2016年2月 同区の中学2年の男子生徒が自殺。大越裕光教育長は「継続したいじめで自殺、というものではないだろう」
2017年3月 第三者委員会が「いじめによる精神的苦痛が理由のひとつ」との答申を発表
4月 生徒の父親が新たな第三者委員会による再調査を求める
<第3の自殺>
4月26日 同市青葉区の中学2年の男子生徒が自殺。29日の会見で、大越教育長は「いじめというより、からかい」といじめを否定
5月 1日 大越教育長が「過去にいじめがあった」
5月19日 男子生徒に対する2教諭の体罰が発覚。頭を拳でたたいたり、口に粘着テープを貼ったりしていた

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平成29年5月24日朝日新聞鹿児島版

「いじめ放置」と市を提訴 中2生徒の遺族

 鹿児島いじめ

提訴後に会見する中村幹年さん=鹿児島市易居町の県弁護士会館

  出水市で2011年に自殺した市立中2年の女子生徒(当時13)の遺族が23日、学校がいじめの対策を取らず、情報開示もしなかったために真相を知ることができず精神的苦痛を受けたなどとして、市に1200万円の損害賠償を求めて鹿児島地裁に提訴した。

 訴状などによると、女子生徒は11年9月、出水市内の九州新幹線の跨線橋から飛び降りて死亡した。学校は全校生徒を対象にいじめの有無を調べるアンケートを実施し、市教委は回答結果などをもとに「(自殺の)直接のきっかけとなる出来事は確認できなかった」と結論づけた。

 遺族は市の情報公開条例に基づいて12年9月、14年2月にアンケート結果の開示を求めたが不開示とされ、遺族が開示を求めて提訴。15年12月に鹿児島地裁が結果の一部の開示を市に命令した。その回答のなかにいじめをうかがわせる複数の記述があったとして、遺族が市教委に再調査を求めた。

 しかし、市教委が再調査に応じなかったため、自殺といじめの因果関係を明らかにするために提訴に踏み切ったという。

 出水市教委は「訴状が届いていないので、コメントできる状況にない」としている。

■「不手際、謝罪してほしい」祖父

 「私の孫が命を懸けて訴えたかったこと、なぜ死ななければいけなかったかを、少しでも知りたい」 自殺した女子生徒の祖父、中村幹年さん(67)=出水市=は23日、鹿児島市の県弁護士会館で会見し、提訴に込めた思いを声を詰まらせながら語った。

 市教委は事件後、生徒の自殺といじめとの因果関係には触れなかった。しかし、全校生徒を対象に実施され、開示に約3年4カ月かかったアンケート結果には「ノートがなくなったという事件があった」「『きもい』と言われているところを見た」など、いじめをうかがわせる記述があった。開示後に市教委に再調査を求めたり、質問状を出したりしたが、いずれも応じなかったという。

 「こんなにも苦しんで学校に通学していたのかと涙が出た。もう少し早く学校が教えてくれたら、こういうことにならなかった」と中村さん。女子生徒がいじめを受けていたことを学校側は把握できたはずで、いじめを防がなかった義務違反が自殺につながったと指摘する。

 「『不手際がありました』と謝罪してもらいたい」。中村さんは力を込めて話した。

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平成29年5月24日NHK青森放送局

中学生自殺 新委員で調査継続へ

  青森市の教育委員会は、去年8月に青森市の中学生が自殺したことと、いじめの因果関係について、来月以降、新たな委員で構成される審議会で、調査を継続することを決めました。
去年8月、青森市の中学2年生だった葛西りまさん(当時13)はスマートフォンにいじめの被害を訴えるメモを残して自殺しました。
調査にあたった青森市の教育委員会に委任された審議会は、先月、「いじめとの因果関係は解明できない」「葛西さんは思春期うつだった」などとする見解をまとめました。
これに対し、遺族側は、「具体的な根拠もなく、思春期うつだと、ゆがんだ事実認定を行うなど、看過し得ない問題が含まれている」として、審議会の委員のうち2人の解任などを求めていました。
こうしたなか青森市の教育委員会は、「委員としての適格性を欠いているとは認められない」として2人の委員を解任しないことを決めた上で、今月いっぱいで審議会の現在の委員の任期が切れたあと、新たな委員を県外から選定し、来月以降、新たな委員で構成される審議会で、調査を継続することを決めました。
青森市教育委員会の成田一二三教育長は「審議会の第三者性を高めて遺族の信頼を得た上で、できるだけ早く報告書を提出したい」としています。
また、葛西さんの父親は「解任の要望が認められず、残念です。調査をしてきた委員全員が交代することも不安です」と話していました。

http://www3.nhk.or.jp/lnews/aomori/6083633511.html

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平成29年5月24日朝日新聞宮城版

中2自殺、小学校教諭も暴言か 「臭いと言われた」

  仙台市で4月、いじめを訴えていた市立中学2年の男子生徒が自殺した問題で、生徒の遺族が「(生徒は)小学校時代から、教諭に『臭い』と言われていた」などと話していることが分かった。

遺族関係者が23日、明らかにした。

 この日、市教育委員会の担当者らが、生徒の自殺を受けて中学校で実施していたいじめについてのアンケート結果を遺族に報告した。この席上で、遺族関係者が市教委にこうした訴えを伝え、小学校時代の状況についても調査するように求めたという。

 遺族関係者によると、生徒は小学4年から6年にかけて、男性教諭から自作のゴム鉄砲を折られたり、「臭い」などと言われたりしていた。市教委の訪問前に、遺族が過去にあったことを思い出した内容として、この関係者に伝えたという。

 市教委は「現時点で小学校教諭による具体的ないじめの事実は把握していないが、今後も引き続き調査したい」としている。

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平成29年5月23日河北新報社説

仙台・中2自殺/体罰が引き金なら許されぬ

  生徒は、教諭の体罰におびえていたという。心に負った傷はどれほど深かったか。信じ難い事実に言葉を失う。

文部科学省がきのう、仙台市の奥山恵美子市長、大越裕光教育長を呼んで指導した。
 青葉区で先月下旬、いじめを訴えて自殺した中学2年男子(13)がその前日、男性教諭から頭を拳でたたかれる体罰を受けていた。1月には、別の女性教諭からも口を粘着テープでふさがれるという信じ難い行為をされていた。
 校長は、これらの重大な事実を自殺から20日間以上たって別の生徒の保護者からの通報で知ったという。

決定的な失態と言わざるを得ない。
 体罰は学校教育法で禁じられている児童、生徒への暴力である。体罰といじめが同じ生徒の身に降りかかり、死に追いやられた可能性がある。
 逆に、今回のことで、学校運営の陰に折り重なっている深刻な悪弊が見えてきた。
 体罰を行った2人の教諭は男子生徒の自殺についての個別の聞き取り調査の際、校長に報告していなかった。
 男性教諭は頭をたたいた行為について「管理職に報告するほどのことではないと判断した」と釈明しているという。

しかし、翌日の自殺との関連に思い至らなかったとは考えられない。包み隠さず事実を話すべきだった。保身を指摘されても仕方あるまい。
 同市教委は、2教諭の怠慢を厳しく指弾している。ただ一連の対応で、学校が校内を掌握する統治機能は十分なのか甚だ疑問だ。
 コントロールが効いていない中でのアンケート調査や聞き取りでは意味がないのではないか。
 見過ごせないのは、別の保護者の関係者が「(男性教師が)男子生徒の頭を日常的にたたいていたと聞いた」と証言し、市教委もきのう「他の生徒に体罰をしていた」と市議会に報告したことだ。
 体罰の常習化などはもってのほかだが、ある程度の力の行使を容認するような雰囲気が校内に浸透していなかっただろうか。
 身体的な痛みや恐怖で生徒を抑えつける体罰は何の役にも立たないことは、現場の教師が一番よく知っているはずだ。いじめとともに徹底的な検証が不可欠だ。
 体罰禁止などの指導徹底を求める文科省の通知では「体罰は、力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為の連鎖を生む恐れがある」と指摘している。
 男子生徒の自殺も、教諭らの体罰が、それを日ごろ見聞きしていた生徒のいじめを誘発し、逃げ場のない所まで生徒を追い詰めたのではないか。その最後の引き金が体罰だったとしたら救われない。
 保護者や市民の学校現場への不信感はピークに達している。市教委、学校は早急に第三者による調査委員会を立ち上げ、自殺の原因究明と、体質改善に歩みだすべきだ。

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平成29年5月23日河北新報

<仙台中2自殺>女性教諭「体罰と認識」

  仙台市青葉区の市立中2年の男子生徒(13)が同校教諭2人から体罰を受けた上、いじめ被害を訴えて4月に自殺した問題で、1月に男子生徒の口に粘着テープを貼った50代の女性教諭が市教委の聞き取りに「当初から体罰という認識があった」と説明していることが22日、分かった。市議会議員協議会で、市教委が明らかにした。
 女性教諭は「授業中に大声を出した男子生徒を注意するための行為。その後の男子生徒の様子に特段の変化がなかったため、校長などに報告しなかった」と話したという。議員らは「体罰だと認識していたなら、生徒に対する人権無視だ」と批判した。
 市教委はまた、自殺前日の4月25日、授業終了のあいさつの際に居眠りしていた男子生徒の頭を拳でたたいた50代の男性教諭が、他の生徒にも頭を小突いたり、髪をかき乱したりしていたことを明らかにした。
 体罰が発覚した今月19日以降、同校の全教諭に聞き取りした結果、他の教諭による男子生徒への体罰は確認されなかったことも報告した。
 市教委は22日、教諭2人を無期限の自宅待機とするとともに、全市立学校に体罰禁止の徹底を通達した。
 協議会後、奥山恵美子市長は特に支援が必要な児童生徒への対応に関し、学校や支援機関の連携の在り方を考える専門組織を発足させる方針を示した。

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平成29年5月18日河北新報

中2女子自殺か ホテル屋上から転落死

  17日午前5時20分ごろ、多賀城市内のホテルの駐車場で、市立中2年の女子生徒が倒れているのを出勤した男性従業員が発見し、119番した。消防署員らが駆け付けた時には既に死亡していた。

宮城県警はホテルの屋上から飛び降り自殺した可能性があるとみて調べている。
 関係者によると、発見時、女子生徒は私服姿で目立った外傷はなかった。現場の状況から11階建てホテルの屋上から飛び降りたとみられる。男性支配人によると、ホテルの非常階段は緊急時に避難できるよう施錠されておらず、外部から自由に出入りできる状態だった。
 中学校の校長は「母親から『娘が遺体で見つかった』と連絡があった。市教委と相談し、対応を検討したい」と語った。18日、クラスごとに担任教諭が女子生徒が亡くなった事実を伝えるという。
 市教委の身崎裕司学校教育課長は取材に「計6回の生活アンケートでいじめに関する記述はなかった。

部活でのトラブルも聞いていない」と話した。
 市教委は17日、市内の小中学校10校の校長を集め、女子生徒の死を伝えるとともに、各校でいじめや悩み事の有無を再点検するよう指示した。
 同じクラスの女子生徒は、亡くなった女子生徒について「とても明るく、優しい子だった。クラスでいじめられているという話は聞いたことがない」と話した。男子生徒は「昨日もいつも通り登校した。悩んでいる様子はなかった」と突然の訃報にショックを受けた様子だった。
 宮城県内では4月26日、仙台市青葉区の市立中2年の男子生徒(13)が自宅近くのマンションから飛び降り自殺した。

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