平成29年4月26日朝日新聞

教え子の死、上手に叱る温かさがあれば…… 悔やむ担任

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十数年前、高校で生徒指導を担当していたとき男子生徒が自殺で亡くなった。男性教師(右)は指導のやり方を改めた=兵庫県内

 

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■小さないのち 大切な君

 3月下旬の早朝だった。「生徒が亡くなった。すぐ学校に来てほしい」。兵庫県立高校に勤めていた男性教師は十数年前、校長からの電話に手が震えた。生徒指導で関わっていた1年生の男子生徒だという。学校に向かう間、自問を繰り返した。まさか自殺なんて。何でや、何でや……。

 前日、喫煙したとして校長室で指導したばかりの生徒だった。母親がいる前で校長と教頭が順に叱った。

生徒指導部長だった男性教師も「反省せい」と注意した。処分は「無期限の家庭謹慎」。生徒は立ったままうつむき、涙を流していた。その夜、自宅を出て命を絶った。遺書はなかった。

 男子生徒は前年末、テストで友人のカンニングに協力したとして無期限の謹慎処分を受けていた。

実際は7日間。「質実剛健」の校風がある同校では、問題を繰り返すと罰を徐々に重くしていた。「今度はもっと長くなる、と思ったのでは」。男性教師は、生徒の心中を察する。

 校長らと男子生徒宅を弔問した。「こんな目に遭う子を二度とつくらんといてください」と祖母に泣きながら訴えられた。母親からは後にこう言われた。「子どもの自尊心はずたずたになった。救いの手を差し伸べる先生が1人でもいてくれていたら」 男性教師は翌年度、生徒指導のあり方を改めることを職員会議に提案した。

 「無期」の謹慎が生徒の不安を強くしていると考え、「当分の間」とした。罰を徐々に重くするのもやめた。

生徒への聞き取りは1時間以内、行き過ぎないよう複数の教員で指導する、といった配慮も重ねた。

「子どもは失敗しながら成長する。やり直す機会を与えることが大切」 異動先の高校でも生徒指導部長を任され、ルールを変えた。「そんな甘いことでどうする」との声も出たが、「教師と生徒が信頼関係を築き、問題を予防することが生徒指導」と、曲げなかった。

 自殺した男子生徒の担任だった男性教師も、当時の指導を「上手に叱る温かさがなかった」と悔やむ。

その後、県立高校の管理職になり、最近、自ら飲酒や喫煙をする動画をSNSに載せた男子生徒を指導した。

なぜしたのかをじっくり聞いた後、こう言葉をかけた。「あなたは自分で思っているよりも頭良いよ。自分の良さを考えて進めば、良い方向に変わっていく」 その指導が正しかったのかはまだ分からない。成長をじっくり待つつもりだ。

■子の言い分、耳傾けて

 親や教師が叱ることが、子どもの心を追い詰めてしまうことがある。成長過程で、ときに問題行動も起こす思春期の子どもたちと、どう向き合えばいいのか。

 教育評論家の武田さち子さんが、教師の指導で追い詰められた子どもが自殺した「指導死」の事例を新聞などで調べると、1989年以降、61件あった。警察庁の統計によると、2016年に小中高生320人が自殺した原因(複数の場合あり)で、「教師との人間関係」は2人、「家族からのしつけ・叱責」は20人だった。

 住友剛・京都精華大教授(教育学)は「子どもへの理解や手法を間違うと追い詰めてしまう」と話す。

反省しているのに殊更にだめなところを探し、どこまで反省すれば許してもらえるのかわからないと、子どもは選択肢を失ってしまうという。

 「『指導死』親の会」代表世話人の大貫隆志さん(60)は17年前、当時中学2年生の次男陵平さんを自殺で失った。学校でお菓子を食べ、ほかの生徒とともに教師の指導を受けた翌日のことだった。

 大貫さんは「『だから君はだめなんだ』と責めるのではなく、子どもの言い分に耳を傾け、『本当の君ならしないよな』などと諭すことが重要だ」と話す。「そうした接し方は親が叱る場合にもあてはまるのではないか」

 一方、大阪市立総合医療センターの飯田信也・児童青年精神科部長は「問題行動は、保護者や教師への『SOS』という側面がある」と指摘。行動した時の気持ちを聞くことが大事で、話を聞くうちに、本人も自覚できていなかった、背景にある怒りや悲しさが分かってくる。「自分の気持ちを言葉で表現できると問題行動は減っていく」という。

 斉藤卓弥・北海道大学特任教授(児童思春期精神科)によると、親や教師が「してはいけないこと」と「してほしくないこと」を区別せずに叱ると、子どもは何が大事か分からなくなるという。喫煙や他人への危害など「してはいけないこと」は理由を説明してやめさせる。してほしくないことは、まず問題行動をとった理由を聞き、どうすればいいか、ともに考える姿勢が大事だという。「問題行動を、叱る対象ではなく、子どもの悩みを解決する機会ととらえて」と斉藤さんは訴える。(片山健志、大岩ゆり)

     ◇

 このシリーズでは、子どもが自ら命を絶つことのない社会を願って取材に応じてくれた自殺未遂の経験者や

遺族、教師、医師らの証言に基づき、私たちにできることを考えます。「手段を詳しく伝えない」「どこに支援を

求めることができるのかについて情報を提供する」など、世界保健機関(WHO)が出した自殺報道に関する

手引を念頭に伝えていきます。

 ご意見はasahi_forum@asahi.comメールするか、ファクス03・5541・8259、〒104・8011(所在地不要)朝日新聞

オピニオン編集部「小さないのち」係へ。自殺を防ぐための取り組みや体験談などもお寄せください。

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平成29年4月25日神戸新聞

川西・高2生自殺 いじめ起因認定、見舞金を支給

  2012年9月、兵庫県川西市の県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が自殺した問題を巡り、日本スポーツ振興センター(東京都)が高校でのいじめに起因すると認め、見舞金を支給したことが24日、関係者への取材で分かった。金額は公表されていない。

 関係者によると、同センターは「学校の管理下でいじめがあった」と認定。いじめと自殺の関連も認め、「学校で発生した事件による死亡」と判断した。

 男子生徒は同級生3人に「ムシ」と呼ばれ、椅子に虫を置かれるなどのいじめを受けた。県教育委員会の第三者委員会は「いじめと自殺の関連付けは困難」と結論づけ、学校側は見舞金の申請を見送った。

昨年3月の神戸地裁判決は関連を認め、同級生と県に計210万円の支払いを命じた。

 見舞金は判決後に両親が申請を求め、県教委を通して受け取った。男子生徒の母親(58)は、学校側へ新たな報告書の提出を求めたという。母親は「今も泣かない日はないが、息子の無念を晴らしたい思いで動いてきた。天国の息子へ『お母さんは頑張ったよ』と報告できる」と話した。(田中宏樹、上田勇紀)

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平成29年4月25日朝日新聞西部本社版

校内の柔道大会で後遺症 福岡県に1億2千万円賠償命令

  福岡市の県立高校で2011年、柔道の試合で頭を打ち重度の後遺症が残ったとして、当時1年だった男性(22)と両親が福岡県に計約2億6900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、福岡地裁であった。平田直人裁判長は「事故を未然に防止する注意義務に違反した」と過失を認め、県に計約1億2400万円の支払いを命じた。

 判決によると、11年3月、校内で開かれた武道大会で、男性はクラス対抗の柔道の試合に出場。

同級生と対戦中に転倒して畳で頭部を打ち、頸髄(けいずい)損傷などで四肢まひなどの重度の後遺症が残った。

 判決は、前年度の大会でも骨折など2件の事故があったのに、原因分析や予防策を協議した形跡がないと指摘。また生徒らの歓声で盛り上がり、冷静さを欠く試合になって事故が起きる可能性があったとし、「大会固有の危険性を十分に説明し、指導したとは認められない」と結論づけた。

 県側は「生徒の安全面に配慮した指導をした」などと主張していた。県教育委員会の城戸秀明教育長は「判決内容を慎重に検討し対応を考える。今後も安全指導の徹底を図っていきたい」とコメントした。(加藤美帆)

 

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平成29年4月24日朝日新聞青森版

「一部委員、独自の自殺論」 青森いじめ、遺族が要望書

 

 青森市立中学2年の葛西りまさん(当時13)が昨年8月に自殺した問題で、市教育委員会への答申を前に、遺族側が再調査や一部委員の解任などを求める要望書を出した。代理人弁護士を通じ、市教委と市いじめ防止対策審議会に対し、ファクスで提出した。

 要望書の提出は23日。要望書では、一部の委員が一般的に子どもの自殺の原因はいじめではなく「うつ」にあるという「独自の自殺論を持っている」と指摘。この自殺論に基づいて、りまさんの自殺の一因を「思春期うつ」と判断していると訴えている。また、判断の根拠の説明を求めても納得のいくものではなかったことから、担当したと思われる委員2人の解任と、関わった部分の変更や削除を求めた。

 さらに、報告書では学校のいじめに対する意識の低さや対応の不適切さと、自殺の因果関係の解明が不足していると主張。いじめに詳しい専門家を審議会の委員に選任し、再調査するよう要望した。

 審議会は11日、市教委への答申を前に遺族に報告書の内容を説明していた。この問題では20日、小野寺晃彦市長が、遺族からの要望書の提出を待たずに、市教委に委員の交代や再調査を要請する方針を示していた。 (山本知佳)

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平成29年4月14日朝日新聞

園児水死、幼稚園側に6300万円支払い命令 横浜地裁

 

 神奈川県大和市の私立・大和幼稚園のプールで2011年7月、園児の伊礼貴弘ちゃん(当時3)が水死した事故をめぐり、両親が園を運営する学校法人西山学園と元園長(69)、元担任(26)らに計約7400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、横浜地裁であった。石橋俊一裁判長は、学園と元園長、元担任の責任を認め、計約6300万円の賠償を命じた。

 事故当時、貴弘ちゃんは他の園児約30人と水深約20センチのプールで遊んでいた。判決は、園児がプール内で入り乱れるなか、当時新任教諭だった元担任がビート板などの片付け作業のために目を離した時に貴弘ちゃんがおぼれたと認定。園児を監視する義務を怠ったと判断し、「事故はこの不注意に起因するところが大きい」と述べた。

 裁判で両親側は「担任以外にも、園児を常時監視する職員を配置する義務があった」などと元園長の過失も主張していた。だが、判決は「担任だけでも監視可能だった」と退け、元園長については元担任の監督者としての連帯責任を認めるにとどめた。両親は、元園長に関する判断を不服として控訴する方針。

 この事故をめぐっては、元園長と元担任が業務上過失致死罪にも問われた。元担任には14年3月、監視を怠ったとして罰金50万円の有罪判決、元園長には15年3月に無罪判決が言い渡され、それぞれ確定している。

 判決を受けて西山学園は「内容を真摯に確認し、当園の責務を果たしたいと考えます」とコメントを出した。

 判決後、父親の伊礼康弘さん(42)は横浜市内で会見した。判決は園側の責任を認め、請求額の8割超の賠償を命じたが、表情に明るさはなかった。最も重視した、元園長個人の過失が認定されなかったためで、「不満と憤りを感じる」と語った。

 亡くなった貴弘ちゃんは「ママが大好きで、一時もそばを離れなかった」という。「おもちゃで遊んでいても、他の子が後ろに並んでいたり、泣いていたりしたら自分から譲るような子だった」と振り返り、幼稚園で働く人たちに向けては「一番大事なのは、園児の命を守ること」と訴えた。

 事故を受けて、再発防止の取り組みは広がっている。文部科学省は14年6月、「幼児は浅いプールでも溺死する可能性がある」と注意を呼びかける通達を出し、翌年には内閣府による子育て支援の一環として、幼稚園や保育所で起きた事故事例のデータベース化が始まった。ただ、多くの私立幼稚園はこの制度に参加していない。

 日本子ども安全学会理事の小佐井良太・愛媛大教授(法社会学)は「現状では公立と私立の区別や、幼稚園と保育所の管轄省庁が違うことから、事故情報が十分に共有されていない。施設の違いを問わずに事例を共有し、検証すべきだ」と話す。(古田寛也)

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平成29年3月30日河北新報

<仙台中2自殺>遺族「納得できぬ」

仙台市泉区の南中山中2年の男子生徒=当時(14)=が自殺した問題で、市教委第三者委員会の いじめ問題専門委員会の答申には「誰が」「なぜ」「何を」という核心部分は盛り込まれなかった。
市役所で29日に記者会見した父親は「到底納得できない」と不満をあらわにし、再調査を求める考えを 明らかにした。
答申によると、男子生徒は2年生だった2015年4月、同じ部活を含む後輩数人から「自転車にいたずら をされた」と保護者に訴えたと記述している。ただ、いじめに関与したとされる生徒に対し、専門委が2度、 調査協力を求めたが、承諾が得られず、事実を確認できなかったという。
昨年12月には、遺族は専門委の調査が不十分だとして、市教委に抗議文を提出した。加害生徒を特定 するため、再調査を強く要望したが、父親は「再調査した形跡はなかった。最悪の結果」とうなだれた。
専門委の調査に強制力はなく、限界が露呈した形だ。
専門委の本図愛実委員長(宮城教育大教職大学院教授)は29日の記者会見で、「拒否されれば警察の ような強制権限はない」と限界を認めつつ、「関係性の薄い生徒にまで聞き取るなど、精いっぱい調査した」 と理解を求めた。
同席した大越裕光教育長も「事実関係が特定できない中、いじめが自殺の一因という結論を出した。
ぎりぎりの判断だったと思う」と答申を評価した。
南中山中の小岩康子校長は「専門委は大変丁寧に調査された。遺族が学校にもっと聞きたい点があれば、 遺族の気持ちを尊重し、調査に当たりたい」と述べた。
市教委と遺族の溝は埋まる気配はなく、父親は「何年掛かってもいい。真相が知りたい」と話し、膝の上で 両手を強く握りしめた。

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平成29年3月30日朝日新聞大分版

柔道部の練習中に元顧問が平手打ち 中津東高

  中津市の中津東高校で昨年7月、当時柔道部の顧問をしていた男性教諭(当時61)が、2年生の男子生徒(当時16)の頰を平手で数回たたいていたことが29日わかった。生徒は頸椎をねんざするなどのけがをしたといい、中津署が傷害事件の可能性もあるとみて捜査している。

 県教委によると、7月21日午前10時半ごろ、同校の柔剣道場で柔道部の乱取り稽古中、生徒のこぶしが教諭の左頭部に当たり、教諭が右手で生徒の左頰を2、3回たたいたという。生徒は翌日、頭痛を訴え市内の病院を受診。8月には頸椎ねんざなどと診断され、約1カ月入院した。9月に脳脊髄液漏出症、中心性頸髄損傷と診断され、2月現在も通院しているという。

 学校側は生徒と保護者に謝罪し、教諭を柔道部顧問から解任した。教諭は体罰について「申し訳ない」と話しているという。県教委は体罰とみており、「警察の捜査結果を踏まえて教諭の処分を検討したい」としている。

(興野優平)

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平成29年3月30日朝日新聞宮崎版

プール女児死亡事故判決 両親の願いに法の壁

 プール小4女児

写真・図版

判決後に記者会見する松岡優子弁護士(左)と西山律博弁護士=延岡市役所

 「国賠法で済まされたら、やっちょれん」。延岡市立東小学校の遠足中に市関連施設のプールで4年生女児がおぼれ、後に死亡した事故を巡る訴訟。29日、宮崎地裁延岡支部の判決後の記者会見で女児の父親は憤った。

裁判で求めてきた引率教諭らの説明や謝罪は最後まで実現しなかった。

 原告は父親の土肥千幸(かずゆき)さん(58)と母親のゆみ子さん(59)。2010年5月、市の第三セクターが運営するヘルストピア延岡の流水プールで、末娘の由佳さん(当時9歳)がおぼれ、意識が戻らないまま13年10月に12歳で死去した。

 両親は「訴訟で学校や教師の責任を明らかにしたい」などとして14年4月に市を提訴。教諭らを採用した県も訴えた。

 原告側代理人の松岡優子弁護士によると、「賠償金額の問題じゃない。当事者の生の声が聞きたい」(千幸さん)として裁判で教諭や校長の証人申請を2度試みたが、裁判所に認められなかった。一昨年10月と昨年10月には裁判所から和解案を提示され、当事者の責任を明示した謝罪文または非公開手続きによる直接謝罪の条件を付けたところ、行政側に拒まれたため和解に応じなかったという。

 国家賠償法は、職務上の過失で公務員個人は不法行為の責任を負わないと定める。千幸さんは「公務員個人の責任を問うのが難しいことは分かるが、我々一般人から見るとギャップが大きい」と指摘。松岡弁護士は「法制度と両親が求めるものがフィットしなかった」と話した。

 判決では、事故を引き起こした教諭や校長の過失のほか、原告側から再三求められた事故状況報告書を提出しないなど、事故後も学校側の対応が不適切だったと認定し、計約5087万円の支払いを命じた。

 判決について、松岡弁護士は「両親が一番気にしていた引率教諭の不手際や事後対応の不誠実さは、ほぼ事実認定されたが、少し疑問も感じる」、千幸さんは「まだ何とも言えないが、遺族の心の中では裁判は終わっていない」。控訴するかは結論が出ていないという。(吉田耕一)

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平成29年3月29日朝日新聞福島版

高2自殺「いじめと学校対応に原因」 第三者委

 会津高2

写真・図版

第三者委員会の報告書について語る神山敬章委員長(左)ら=福島市中町

  会津地方の県立高校の女子生徒が自殺した問題で、県が設置した第三者委員会「県いじめ問題調査委員会」(委員長・神山敬章明星大教授)は28日、約1年前の県教育委員会の調査結果を覆し、生徒へのいじめと自殺の因果関係を認めた。また、学校の不適切な対応も自殺の要因と認定し、再発防止を強く求めた。

 「一人の生徒の死を重く受け止め、二度とあってはならないということを我々は言い続けていかなければならない」。

第三者委の神山委員長は、報告書を県に提出した後の記者会見で、県や学校側などに再発防止を強く求めた。

 神山委員長が「厳しく判断した」とする報告書では、いじめに加え、学校側の不適切な対応も「大きな要因である」と指摘し、生徒の自殺の原因を幅広に認定した。

 2016年2月、県教委は「いじめと自殺の間には直接の因果関係が認定できない」とする調査結果を発表。それを不服とした生徒の両親の申し立てを受け、同年4月、第三者委の調査がスタートした。

 両親のほか、校長など教職員15人から改めて聞き取りを実施。生徒が通っていた主治医からカルテ情報の提供を受けるなどして調査を進めてきた。

 28日に発表された報告書では、生徒は吹奏楽部の上級生から練習中に無視されたり、廊下で一人だけ練習するよう命じられたりして、「うつ状態」になったとし、これらの厳しい指導をいじめと認定した。

 一方、欠席などが多くなった生徒について、学校側は学業の悩みが原因と考え、いじめに起因するものとは考えず、部顧問に対応が任され、組織的な対応はなかったとした。

 県教委の調査では、生徒の自殺の原因を、学業の悩みなど「様々な要因が考えられる」としていた。

 だが、第三者委は、生徒が主治医に対し、主に部活での悩みを相談していたことなどから、「うつ状態」になった主な原因は部活の上級生との関係にあると判断。いじめに加え、いじめとして扱わなかった学校の不適切な対応の2点が「自殺に追い込んだ大きな要因」と認定した。(小泉浩樹)

 

■「教育関係者 全員読んで」 報告書を受け女子生徒の両親が所感

 第三者委の報告書の発表を受け、女子生徒の両親が28日夕、福島市内で記者会見した。報告書について、

「私たちの思いを表現している」と評したうえで、「県内の教育関係者全員に読んでいただきたい」と訴える所感を

発表した。

 父親は「前回の報告書の結論で覚えた違和感は解消された」と語り、いじめと自殺の因果関係を認め、学校の

不適切対応を自殺の一因とした今回の報告書を評価する意向を示した。そのうえで、「報告書が出たことで娘が

帰ってくるわけではないが、これで前に進むと思った」と述べた。

 所感では、報告書が教師らによって活用されることを望んでいる点を強調。父親は時折、声を詰まらせながら

「事実関係を認識していただき、自分のクラスに娘のような子はいないか、加害者とされた上級生のような子は

いないか、同じような部活運営をしていないか、自分の周りを振り返ってほしい」と訴えた。

 また、父親は上級生に対しては「事実をしっかり振り返ってほしい。反省し、これからの生活をしていただきたい」

と語り、高校には「報告書を深く理解し、子どもたちの教育にあたってもらいたい」と語ったが、損害賠償請求など

法的措置に関しては「現段階では、その思いに至っていない」と述べた。

 第三者委の調査手法については、家族に対し、検討項目や調査結果などを説明しながら作業を進めた点を挙げ、

「委員会の進め方についても感謝したい」と語った。(戸松康雄)

 

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平成29年3月29日岩手日報

いじめ対応めぐり中学校長ら懲戒 県教委、矢巾事件で

 矢巾町のいじめ自殺事件で県教委は28日、生徒が通っていた中学校の男性校長(53)を減給10分の1(1カ月)、女性担任教諭(43)と女性副校長(60)、1年時の男性校長(59)を戒告の懲戒処分とした。いじめに関する県教委の懲戒処分は初。昨年12月に町の第三者委員会がまとめた調査報告を踏まえ、いじめ防止に向けた学校の組織的対応が不十分だったことや、生徒が自殺をほのめかしていたのに適切な措置を取らなかった担任の対応などが懲戒に当たると判断した。

 県教委は校長2人について、学校が定めたいじめ防止基本方針の教職員間での周知やいじめ防止対策委員会の運営などを怠り、学校組織として対応していなかった点を問題視。自殺をほのめかすサインが顕著になり、自殺時に現職だった校長の処分をより重くした。

 担任教諭は生徒が発していた「自殺のサイン」を認識できず保護者への連絡を怠ったことや、いじめ対応に関して学級全体への指導が不足していた。上司らと情報共有しなかった点については、管理職による体制整備が不十分で組織としての受け皿がなかったことが問題とした。

 県教委は、学校全体でいじめに対応する体制の整備に向け、管理職の意識醸成を重視。新年度に開く校長研修でいじめ防止の取り組みの実効性を高めるほか、いじめの認知や情報共有、組織対応の研修を継続する。県教委教職員課の今野秀一総括課長は「1人の命が失われた事実は重い。この反省を再発防止に生かしていく」と述べた。

 

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